Monicaが実施したアンケート調査によると、ショップ販売員さんが抱える「悩み事」のナンバーワンは「クレームに関すること」でした。そこで今回、株式会社BRUSH代表、秋山恵倭子さんに、「正しいクレーム対応」についてお聞きしてきました。秋山さんは、セリーヌジャパン、ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インクなどラグジュアリーブランドでの販売員を40年以上勤めた経験と実績を持ち、現在はその経験を生かし、パッションとメソッドの両面から多くのクライアント企業の店舗を支え、成功に導いています。そんな秋山さんの考える、クレームへの対処法とは?

お店の看板を背負って立つ人間として、お客様と対峙する度胸が必要

クレームを受けた際の心構えから教えてください。

クレームって、突然起こるんです。だから、心構えではなくて、「平素からどういう風にお店に立っているか」が大事です。クレームが起きたとき、経験の浅い方だと「うわあ、どうしよう」と戸惑ってしまって、問題と向き合わずに目を逸らそうとしてしまいがち。そうではなく、まず「クレームとは何か」を理解しなければなりません。

そもそも、クレームとはどうして起きるものなのでしょうか。

クレームというのは、お客さんの「残念な気持ち」や「怒り」です。この感情は向けられる方向として、「商品に対してのもの」と「接客態度」の2つがあります。商品に欠陥があった場合は、とにかく迅速な対応が求められますが、いずれにせよお客様に対して「当事者意識」を持つことが大切なのです。

当事者意識、つまり怒っているお客様から逃げないこと、そして「なぜ怒っていらっしゃるのか?」を理解することが大切なのですね。

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そうですね。すぐに上司に繋ぐのも、あまり得策とはいえないでしょうね。「あなた、私から逃げようとしているのね?」となりかねませんから。お店の看板を背負って立つ人間として、お客様と対峙する度胸が必要です。

「怒りのアンテナ」の感度が、人によって強かったり弱かったりするだけ

販売員になりたての頃に強烈なクレームを受けると、つい萎縮してしまいがちです。「度胸を持つ」にはどうしたらいいのでしょう。

繰り返しになりますが、お客様のおっしゃることを、まずはよく聞いてみること。正当なクレームであれば必ずお詫びをしなければなりませんが、「とにかく謝ればいい」というわけではない。だた謝るという認識は絶対に間違いです。いわゆる「モンスタークレーマー」と呼ばれる、金品の要求が目的の人たちの場合は別で、会社の専門部署に任せるべきですが、一般のお客様がお怒りになるのは、それ相応の理由がちゃんとあるからです。その「怒りのアンテナ」の感度が、人によって高かったり低かったりするだけで、何もないのに怒る方はいらっしゃらない。

とにかく、まずはお客様のお話に耳を傾けるということですね。

そうです。まず真摯に傾聴。そして、お客様のお気持ちに寄り添うということです。ところが、お客様のお怒りの原因がわかった時に、「私はそんなつもりではなかった」という主張をする販売員がすごく多いんですよ。これも大きな間違いです。私たちは、お客様のために売り場に立っているので、自分がどんなつもりであろうが、お客様に不快な思いをさせてしまったら、そこに対しては自分自身が理解した上で素直にお詫びするのは当然のことであり、得策です。

その百貨店にお買い物にいらした方は、皆「私たちの」お客様

お客様が怒っている状態について謝るのではなく、お客様が怒っている原因、内容に対してお詫びするということが大切なんですね。

その通りです。私は30年ほど前にセリーヌの売り場に立っていたのですが、お店の前で、食料品の袋を持った男性がお店の奥の方にいた私に向かって、「お前! 生意気だ!」と、ものすごい剣幕で怒鳴ってこられたことがあったんです。当時、私は問題を起こすような販売員ではなかったので、気を回した当時の店長が、私に対して「裏に入っていなさい」とかばってくださった。それで、フロアのマネージャーがそのお客様の対応をしていたんですね。最初はもう、何が何だかわからない状態でした。

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そうですよね……。

でも、「あのお客様は、何であんなに怒っておられるのだろう」と、よく考えてみたんです。そうしたら理由がわかりました。私、その時カウンターでものを書いていて、パッと顔を上げた時に、そのお客様と目が合ったんです。そして、再び目を下に落としてものを書き続けた。それがいけなかったのですね。

どういうことでしょう。

たとえセリーヌのお客様ではなかったとしても、その百貨店にお買い物にいらした方は、皆「私たちのお客様」なのです。であれば、その男性のお客様とも目が合った時には、きちんと会釈をすべきだった。それをせず、すぐに目線をそらして書き物を続けたことで、お客様は「ないがしろにされた」とお感じになったのでしょう。その時に「私はそんなつもりではなかった」は通用しないですよね。すぐにそのお客様のところへ行き、「そんなつもりはなかったのですが、目が合った時に会釈をするべきでした。とっても生意気な態度をとってしまい、本当に申し訳ありませんでした。」と謝りました。

テクニックは無い。誠心誠意、心からの謝罪をする

お客様のお気持ちに寄り添えば、たとえ些細なことであっても怒りの原因が分かるはずなのですね。

覚えておいて欲しいのは、「どんなクレームであっても必ず解決する」ということ。時には何ヶ月もかかるような大きなクレームを経験することもあるかもしれません。でも、根気強くお客様と向き合って、解決したときにはものすごくやり甲斐を感じるはずです。そして、そういうお客様というのは、実は大切な顧客になってくださるケースも多いんですよ。

要はクレーム対応も、コミュニケーションなんですよね。クレーム「処理」ではないというか……。よく、「お客様のいうことを反復する」とか、「キラーワードを散りばめる」とか、「ネガティヴなことは先に言う」とか、クレーム対応のテクニックもよく紹介されていますが……?

まずは「心」です。テクニックを使うと、どうしてもマニュアルっぽくなってしまう。私から言えるテクニックがあるとしたら「正しい姿勢で立ち、普段よりも落ちついて、相手の目を見て話をよく聞くこと」ですね。そして、お客様の怒りを理解した上で「心からの謝罪」をして、「初期消火」することでしょうか。お客様に謝罪して、それで終わりではありません。アフターケアをしっかりすること。クレーム対応をしたお客様が、もう一度お店に戻ってきてくださって、初めて「解決」と言えるでしょう。お付き合いの長いお客様になって、「そういえば昔、あんなことがあったね」なんて一緒に笑い合えるようになったら最高ですよね(笑)。

では最後に、読者へメッセージをお願いします。

販売は、生涯を捧げるに相応しい素晴らしい仕事だと思っています。もちろん、大きなクレームを受ければ誰でも落ち込みますし、時に萎縮してしまうこともあるかもしれません。でも、そういう失敗や挫折は「貴重な経験」だと思って欲しい。そうすればきっと、販売員としてまたひとつ成長できるはずですから。

 

Monicaが実施したアンケート調査によると、ショップ販売員さんが抱える「悩み事」のナンバーワンは「クレームに関すること」でした。
「Q.現在、あなたにとって課題だと感じていることはなんですか。」
(対象:20~35歳/全国/女性/接客業に従事する方)

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