好きなことだけをする、ヴィヴィアンのブレない姿勢

マルコム・マクラーレンについても、かなり赤裸々に語っていますね。才能に溢れた人物ですが、同時に嫉妬深く、気難しい一面もあったと。

マルコムって、本当に問題児だったのだなっていうのは、同じ女性として読んでいて複雑でしたね(笑)。でもやっぱり、彼と一緒に行動しているときのヴィヴィアンが本当に楽しそうで、どんな局面でも最終的には彼をかばっているんです。本当に彼を尊敬しているっていうのは、今も変わっていないのだなというのがよくわかります。男性として、夫としては問題が色々ありましたが、人間としての魅力や才能が本当にあった人なのだろうなというのは、どのエピソードを読んでもわかります。写真を見ても、二人が写っている姿がとにかくカッコいいんですよね。こういうのをみると、お互いが惹かれあうのも当然だったのだろうなと。

その後、パイレーツ(海賊)・ルックへと向かったのはどういう経緯だったのでしょう?

もともと歴史がお好きな方なので、その辺りを掘り進んで行く中で発見したのでしょうね。服装のインスピレーションを、歴史や伝統の中から得ることが多いようです。

「ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』P214より抜粋(提供:DU BOOKS)

『ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』P214より抜粋。(提供:DU BOOKS)

彼女の服が前衛的なのにどこか品があるのは、そういう歴史や伝統をどこかに感じさせるからなのかと思いました。

ただ安っぽくて派手なだけにはならない。立体的な裁断によって女性の体の形を美しく見せるなど、彼女はお針子さんとしてのテクニックも相当あったらしいです。しかも、いわゆる専門学校で学んだりした経歴もなく、全て独学で習得したらしいのですよね。そういう、技術に裏打ちされたセンスがあったからこそ、ここまで大きなブランドになったのだと思います。

まるでコラージュアートのようなTシャツから、美しいドレスまで作れてしまうのが、ヴィヴィアンのヴィヴィアンたるゆえんですね。また、彼女のそういうセンスを面白がるイギリス人の国民性、ユーモアセンスにも感心します。

そうなんですよね(笑)。英国女王の写真をコラージュしたTシャツをパンク時代に作ったかと思えば、英国王室の標章をモチーフにしたロゴを作ったり。王室とも交流があって、女王やヘンリー王子やチャールズ皇太子とも親しいから面白い。本書によれば、子供の頃にテレビで戴冠式の様子を見て、そのときの強烈な印象が、のちに伝統文化への興味へとつながっていったようです。

 

「ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』P388より抜粋。(提供:DU BOOKS)

『ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』P388より抜粋。(提供:DU BOOKS)

マルコムと離れ、エレガント路線へと変更し成功していく過程については?

詳細に書かれています。当時パンク・ムーヴメントの追い風もあって、彼女の服は世界的に話題となっていました。そのため、傍目からみるとビジネスとしても成功していたように見えますが、実はそんなことはなくて、一生懸命服を作っても収支はトントンだったり、なかなか貧乏から抜けられない時期が長かったようです。そこを救い出す人物と出会い、エレガント路線へと転向し成功していくのですが、そのときはすでに40代に差し掛かるあたりなので、かなり「遅咲き」だったんですよね。苦労されてきたのだなというのがよくわかります。

本書後半の読みどころは?

90年代に入ると、それまで大変だった子育てがひと段落し、子供たちも大きくなってそれぞれブランドを始めたりなどして、彼女を支えるようになっていきます。大器晩成型のヴィヴィアンでしたが、後半は本当に順風満帆な人生を謳歌しているようですね。子供達は皆、幼い頃に大変な貧乏生活をしていたにも関わらず、文句一つ言わずに母親を支えてきたんですよね。お母さんのことが大好きだと口を揃えて話していて、ヴィヴィアンの教育が本当に良かったんだろうなということを、読みながら強く感じました。長い人生、報われたのだなあと感無量になりましたね(笑)。

『ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』P233より抜粋。(提供:DU BOOKS)

『ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』P233より抜粋。(提供:DU BOOKS)

ずばり、ヴィヴィアンの魅力はどの辺りにあるとお考えですか?

やはり、子育てをしながら職業を得て、さらに夫も支えるという、この現代でも「大変だね」って言われるようなことを、1950年代からやっていたところですね。信じられないほどパワフルですし、しかもそういうことを苦労話として語るのではなく、「やりたいことがあったからやっていただけ」「好きな人がいたから支えていただけ」「子供が可愛かったから育てたかっただけ」って言っているのが、同じ女性としてすごいなと心から思います。

貧乏も、苦じゃなかったのでしょうね。

お金がなくてトレーラーハウスに暮らしていた時期もあったみたいですが、当時を振り返った子供達が、「あのときはお母さんとずっと一緒にいられて楽しかった」「一緒に野の花を摘んでそれを食べた」「花の名前を調べているだけでも楽しかった」と話しています。元々教師だったというのもあるのでしょうけど、子供と楽しく接することにも長けていた方なのでしょうね。

お話をうかがって、ヴィヴィアンのことをますます好きになりました。

そうですよね。人間として素敵な人なのだなあと、私も改めて思いました。