東大、官僚、ロースクールへ留学、弁護士というキャリアを持つ山口さん。

現在はまた東大で家族法について勉強されているそうです。

今回は、そんな山口さんに『仕事の捉え方』についてお話いただきました。

 

―現在のご職業について教えてください

今はまた学生に戻って勉強しています。

官僚、弁護士と忙しく過ごしてきて、またアカデミックなところに行きたいなと思って大学に戻ることに事にしました。今は家族法について勉強しています。

―大学3年生のときに司法試験に合格されたとのことですが、学生のころから弁護士を目指していた?

最初は法律って好きじゃなかったんです。というか興味がなかった。法律は悪い奴を保護するものなのかなって思っていて、ずっと拒否していました。でも勉強しないまま拒否するのはよくないのではと思い、勉強を始めたんです。

―せっかく司法試験に合格していたのに、弁護士ではなく官僚となって、その後転職して弁護士になって、そして辞めて今は学生。転職という人生の一大イベントを何度も決断できたのはなぜ

転職って、大変なんですけど、「実際に経験してみて大変だ」っていうより「転職って大変なんだろうな」って尻込みしていたことが多くて、めんどくさい、めんどくさいって思ってる人が多いと思うんです。

でも私、転職だけが決断じゃないよなって思うんですよね。

転職だけが「決断」ってクローズアップされますけど、このまま今の職場に居続けるのだって決断じゃないですか。

「自分にこの仕事が合うのかなー、合わないかもなー」と思いながら30歳超えて40歳超えて、ずーっとそうやっていくのも、それはそれで危ないんじゃないかって思います。

転職するときはたくさん悩む。自分がやりたいこと、自分に合っていることーーそうやって自分で考えて選び取っている。もし、何も考えずに、今の状況に留まっているなら、「何も選ばないこと」は安全でもなんでもなくて逆にもっと危ないんじゃないかって。今は若いからできていることかもしれないし、今の仕事を10年続けたときに「あー、私、こんな充実してた」って思えないかもしれない。時間は戻ってこないから、後から後悔しても仕方ないじゃないですか。

私が財務省を辞めた理由?うーん…本当に大変でしたからね。睡眠時間とかほとんど取れないし。睡眠時間が少ないと、人って、将来とか先のことを考えられなくなる。「あと5分、あと5分起きてられればいい」くらいに思うようになる。それに、リアルに老けていくんですよ(笑)。

あとは、自分らしい感性を保つのが難しいかなって思った。財務省って「男性」と「男性がイメージする、いわゆる分かりやすい女性」しかいない。女の人は、可愛げがあって、ある程度の歳になったらちゃんと妻になって母になって…。でも、みんながみんなそんなステレオタイプ的な「女」じゃないわけじゃないですか。少なくとも、私は違った。だからって、「男」になれるわけでもない。なんか、自分をどっちかにしなきゃいけないのは困ったなと。

なんか男的な生き方も、女的な生き方も押し付けられずに、もっと中間というか、柔軟というか、なんかないのかなと。

そうだったら違う方向に行ってみてもいいかなと思ったんです。

―やりたいことあるけど、待遇や条件で迷っている方に関してどう思う?

やってみない理由を探すのは、すごく簡単だけど、意外と時間がかかります。「お給料が安い」「誰も友達がいない」「新しい仕事を今から覚えるのは大変」――すぐに3つくらい思いついちゃう。でも、何度も何度も自分に同じことを言い聞かせて、やらなかったことを正当化することになる。かなり長い間ぐちぐちしちゃう。この後の気持ち悪さが、不快だしつらいんです。

一方、やってみるって決めるまでには勇気がいるけど、決めたら「えいやっ」って感じで、すぐ動けます。財務省を辞めるまでは結構大変で、いろいろな人にご相談して、悩みに悩んで、でも決めちゃったら後は意外とすっきりだったな。お世話になった人にお詫びにいくのが一番つらいところですけど、でも心は前向きかな。

私は、転職を安易に勧めるつもりもないんです。苦労するところもあるし。弁護士から学生になりましたけど、お給料が減るというのは現実的に大変なことです。だから、夢見てるみたいにふわふわと辞めるんじゃなくて、現実的にきちっきちっと考えてほしいなって思います。

そのうえで、私が言えるのは、自分の生活って思ったよりもコンパクトだってこと。若いころからすごい贅沢をしてきて、それに慣れきっちゃってるとかでもなければ、特に我慢したり、節約したりしなくても、自分一人ならなんとでもなりますよ。

決めないこと、変えないことに慣れっちゃってる人も、もし今のお仕事が充実してるって思えないなら、このまま50歳、60歳になってくの?って考えてみたらいいのかなって。私、こうやって生きてこうやって死ぬんだって思ったとき、もし「あーーー!そんなのは嫌!!!」みないな心の叫びがあれば、やっぱり勇気を出して「えいやっ」って踏み出すべきですよ。

私はね、つらいことがあっても、毎日、少しでも前に進んでるって感覚が好き。そして、それが生きてる実感になる。もし、自分の仕事に向上心を持てなければ、毎日、ぼんやりとしちゃってかなりつらいと思います。

待遇は絶対大事、そこはきっちり考えた方がいいけど、「待遇が大事」と「待遇だけが大事」は違うこと。

私は、ショップの販売員の方を尊敬してます。私が思うその先を提案してくれるでしょ?

私は、意外とコンサバなので、選ぶ服にあまり冒険しないし、自分にはこれが似合うっていう思い込みがある。だけど、「このワンピースに、こちらのジャケットを合わせたらいかがでしょう?」とか、さりげなくトップスやインナーを持ってきてくれるとか。それで、私が思ってもみないような組み合わせになって、「あ、私、この色を着るとこんな感じなんだ」って思うのって、とても楽しい経験なんです。まだ見たことがない自分に会えたような感動がある。そういう店員さんのところには、やっぱり通っちゃう(笑)。

今の自分が手の届かないようなブランドで、ちょっと緊張しながらお店に入って、でも、店員さんが笑顔で話しかけてくれて、それでその人の素敵な着こなしが憧れになって、「こんなふうになりたいな」って思う。そういう経験、みんな、あると思うんです。

お客様に、まだ見たことがない新しい自分を提案してあげるのって、その人にしかできないセンスだし、それでお客様が満足して店員さんのファンになっちゃうことってあるわけだし、それもやりがいになるんじゃないかなと思います。