第7回を迎えた国内最大のファッションの総合展「ファッションワールド東京」にて、音楽プロデューサー、ファッション・デザイナー、アーティストなど様々な肩書を持つ藤原ヒロシさんが、自身が長く関わってきた「カルチャー」の定義と、最近のファッションの動向を語りました。

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セミナーのタイトルに題されたのは、「ファッションとカルチャー」。若者を中心にカリスマ的な人気を誇る藤原氏のセミナーとあって、当日は立ち見が出るほど大盛況となりました。

藤原氏は、「今から1000万年前、皆さんがまだ猿だったときのことを想像しながら聞いてください」と前置きしたあと、私たちがどのようにして「カルチャー」を形成していったのかを説明していきました。

「言葉も有していなかったころ、人間は木の上で暮らしていましたが、ある時から木を降り、ナックルウォークをするようになり、そこから二足歩行が始まって、猿人になりました。バランスを取りながら二足歩行ができるようになり、手が自由に使えるようになって初めて、枝を切って道具を作ったり、果物を採ったりすることができるようになったのです。僕が子供の頃は、脳が発達したことで手を動かし道具を使えるようになったと教わりました。ところが最新の研究によれば、その”逆”なのだそうです。まず手が発達して、動かすようになって脳が活性化たことで、その相乗効果によって急速に進化していったのです」

Cultureの語源はCurel(耕す)=心を豊かにするもの

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カルチャーを語る前に類人猿の話からスタートした藤原氏

類人猿が登場したのは700年前ですが、1974年にエチオピアで「ルーシー」と名付けられた、およそ300万年前のアウストラロピテクスの化石人骨が発見されます。全身の約40%にあたる骨がまとまって見つかったため、「ルーシー」を通じて私たちは様々なことを知りました。

「ルーシーは、どうやらグルメだったらしく、肉を食べていたようです。それまでの類人猿は、果物や昆虫、肉といってもせいぜいネズミなどの小動物くらいしか食べていなかったのが、大型哺乳類の肉を食べたことで手軽に栄養(特にタンパク質)が採れるようになった。すると、草を食べていた時間が短縮され、暇な時間ができるとさらに脳が活性化していったのです」

狩猟から農耕へ。自分たちが食べているものを、もっと美味しくするためには土を耕し、土壌を豊かにする必要があったのです。

「『耕す』をラテン語で『Correll(コレル)』と言います。この言葉が変化し『Culture(カルチャー)』となりました。つまりカルチャーというのは、作物を実らせ、生活に余裕が生まれたことで、より美味しいものを作ろうとする=『耕す』ということ。ファッションは、雨露をしのぐために服を身にまとうだけでなく、カルチャー(耕す=心を豊かにするもの)でなければいけないのです」

「普通の」ファッションとは?

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藤原氏が影響を受けたという映画『さらば青春の光』(1979年・イギリス) Copyright © 1979 The Who Films

次に藤原氏は、「ファッションはジレンマを抱えている」と指摘しました。

「僕は中学生の頃に映画『さらば青春の光』を見ました。その中でモッズファッション(細身の三つボタンスーツにミニタリーパーカー)に身を包んだ主人公ジミーが、ロッカーズファッション(革ジャンにリーゼントスタイルの若者)の幼なじみに、『俺は普通の人と同じが嫌だ。だからモッズをやってるんだ』と話すのですが、そう言いながらモッズはみんな同じ格好をしているのです。このシーンは、当時パンクファッションだった自分にとって衝撃であり、同時にものすごく納得のいくものでした」

世の中の景色を変えたファストファッション

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ファッションを平均化させたファストファッション

「ファストファッションの功績は、『世の中の景色を変えた』ことだと僕は思います。70年代後半に上京した頃、東京にはすごく奇抜でオシャレな人もいたけど、めっちゃくちゃダサい人もすごくたくさんいました。僕らの親世代は、洋服に全く気を使わない人が大勢いたのです。
そういう人たちも皆、ユニクロで服を買うようになり、そこそこオシャレに見えるようになりました。ユニクロ・スタイルがスタンダード化して、街を歩いていても、トンデモなくダサい人は随分少なくなりましたよね。
ただし、それが『ファッション』と言えるのでしょうか。心を豊かに『耕す』カルチャーは含まれていないのではないでしょうか」

 ファッションに「人間力」をプラスする

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会場いっぱいの聴衆からは様々な質問が藤原氏に投げかけられた

「そういう意味では、ファストファッションも使い方次第でいくらでもオシャレになる。お店側も、単に服を売るのではなく、コーディネートファッションの楽しさ、ファッションにまつわるカルチャーの情報発信を、どんどんしていくべきです。ネットで簡単に服が買える今だからこそ、『人間力』が問われるのではないでしょうか」

セミナー本編は40分と短めでしたが、その後の「質疑応答」では「ファッションと音楽の関係」や「東京オリンピック」、藤原氏率いるデザイン集団「fragment design」についてなど、受講者から数多くの質問が飛び交っていました。