「サカイ」「ロエベ」「ヴェトモン」「コシェ」の4ブランドに注目

後半は向氏が取材した2016-17秋冬パリコレクションから、「サカイ」「ロエベ」「ヴェトモン」「コシェ」の4ブランドが映像を交え紹介されました。まずは「サカイ」。デザイナーは、世界が注目する阿部千登勢。ブランドを読み解くキーワードのひとつは「ハイブリッド」です。今回のコレクションでは、ランチコートやガンジャケット、ライダースなど、異なる形のアイテムの組み合わせや、オーガンジー素材のミリタリーウエアなどが披露されました。「ハイブリッド」はサカイが得意とするスタイルで、一枚の生地の中に「男っぽさ、女性らしさ、やわらかさ、cozyな感覚」などいくつもの要素が込められています。

次に紹介されたのは、「ロエベ」。デザイナーのジョナサン・アンダーソンは、アートに造形が深く、その感覚が会場作りや洋服に反映されています。プロポーションやシルエットの絶妙なバランス感覚が作品に落し込まれ、それが新しさを生み出し、魅力になっています。 今後流行が来るであろう「ネコもの」も要注目とのこと。ジョナサンいわく、「明確な理由はない」そうですが、向氏は「リラックスではないか?」と分析します。こうした「ハズシ」がアート感覚と結びつき、「ロエベ」のストーリーを形成していると考えらます。

続いて取り上げられた「ヴェトモン」は、「バレンシアガ」のアーティスティック・ディレクターになったばかりのデナム・ヴァザリアの注目ブランドです。レトロやノスタルジックというスタンダードを感じさせるものをピックアップしつつ、そこに現代的な感覚を織り込んでいるのが特徴。向氏が気になったのは、ショールームで目にした「Are we having fun yet ?」(ちゃんと楽しんでる?)というレタードアイテム。これはファッションを仕事にしている人たちに向けられたメッセージで、「fun(楽しむこと)を忘れたらつまらない」という大切なメッセージでもあるといいます。

最後は「コシェ」。2014年に立ち上げられたブランドで、デザイナーのクリステル・コシェールは、老舗メゾン「ルメール」のアーティスティック・ディレクターも努め、クチュール的要素とストリート感覚を融合させた「着られるクチュール」が注目されています。今回のショーは、爆破テロのあったエリアにも近いパリの商店街で開催されましたが、日常生活のリアルな場所を使うという演出によって、「恐れるな」というメッセージも感じられたそうです。

ファッションに関わる人は、ストーリーテラーである

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(提供:ファッションワールド事務局)

今回紹介されたデザイナーたちは皆、服作りのプロであると共にメッセージを伝えるプロでもあると向氏は語ります。「デザイナーたちは、今大切だと思っていることを服に込めている。そこにはストーリーがあり、そんな説明を聞いたら、買わずにいられない」とのことでした。そして、現在、好調なブランドに共通しているのは、ストーリーやメッセージがある点。ファッションに関わる者は、洋服に織り込まれた物語やメッセージを伝えるストーリーテラーであることが重要だと語りました。